呼吸器外科


肺がん

肺がんは初期の段階で適切な治療が行われれば、高い確率で治ることが期待できる病気です。適切な治療とは手術による切除です。癌の大きさや広がりから進行度(病期・ステージ)を決定します。同じ治療(手術)をしても病期が進んだ段階ではその分再発率は高くなってしまいます。癌であればできるだけ早い内に治療を開始した方が良いと言われるのはこのためです。肺がんは癌による死因のトップを占めますが、これは肺がんと診断された時点で既に進行している場合が多いのがその理由の一つです。

肺がんの早期発見方法

肺がんに限らず胃がんでも大腸がんでも初期の内は症状がありません。症状が出た段階では進行していることが多いのが事実です。ではどのようにして肺がんを早期に発見することができるのでしょうか。最も簡単でしかも効果的な方法はCT検診です。CT検査は呼吸を1回止めている間に撮影が終了します。しかも絶食などの前準備の必要もなく、短時間で完了します。呼吸器センターでは月曜日から金曜日まで毎日CT検診を受け付けています。受診当日に検査を行いその日に結果説明を行います。

肺がんの診療について

  1. 肺がんと診断された。
  2. 肺がんの疑いがあると言われた。
  3. 肺がんかどうかはわからないが胸部レントゲン検査(単純X線検査またはCT検査)で異常な影があると言われた。

上記のいずれの場合でも呼吸器内科だけでなく呼吸器外科でも対応します。

肺がん治療の流れ(手術の場合)

肺がん(診断確定または疑い)の手術目的で受診された場合、初回受診より約2週間以内の手術が可能です。検査体制の効率化により、受診から入院までの通院は原則として不要とし、遠方からお越しの方や頻回の通院が困難な方へも対応しています。

肺がんの手術

胸腔鏡下手術でほとんどの肺がん手術を行なっています。当科では閉鎖式完全胸腔鏡下手術(ビデオ)を行なっており、側胸部に4か所の小さな穴を開けてそこから胸腔鏡やその他の手術器具を挿入してモニターを見ながら手術を行います(図1)。当科の手術は胸腔鏡下手術の中でも最も小さな傷で行う部類のものとなります。切除したものの大きさに応じて穴の内の一つを拡大して摘出します。この場合、形成外科のテクニック(Z形成術)を応用して縫合後は約2cmの小さな傷として完成します(図2)。体にかかる負担を少なくすることを目的として開発された手術ですが、傷が小さいため結果的に整容面でもとても優れた手術となります。通常は術後5日〜7日目で退院可能となります。

閉鎖式胸腔鏡下左上葉切除術
閉鎖式完全胸腔鏡下左上葉切除術
【図1】閉鎖式完全胸腔鏡下左上葉切除術
左上葉気管支を自動縫合器で切離している場面
(左上葉切除術の最終過程)
Z形成術により拡大した傷(約2cm)術後3ヶ月目の状態
【図2】Z形成術により拡大した傷(約2cm)
術後3ヶ月目の状態

気胸

肺は空気で膨らんでいるため、穴が開くと縮んでしまいます。
自然に穴が開いてしまう状態を自然気胸、外傷で肺に傷がついて穴が開いてしまう状態を外傷性気胸と呼んでいます。

自然気胸

自然気胸は肺の表面に生じた“ブラ”【図3】と呼ばれる、一見すると風船ガムのようなものが気圧の変化等で破れて肺から空気が漏れて肺が縮んだ状態です。自然に穴が塞がって治ることもありますが、この場合ブラ自体は残るため再発する可能性があります。

【図3】胸腔鏡下ブラ切除術
径2.8mmの極細胸腔鏡と径3mmの細径鉗子を用いて
自動縫合器でブラを切除している場面 

自然気胸の手術

胸腔鏡下に自動縫合器でブラを切除して気胸の原因を取り除きます【図3】。手術は側胸部に穴を3か所開けて行います。整容面を重視する場合は径が2.8mmの極細胸腔鏡と径3mmの細径鉗子(手術器具)を使って行います。手術をした方が良いと判断される場合は受診(紹介)当日もしくは受診後3日以内の手術を行います。通常は手術後2日目の退院となります。

縦隔腫瘍

縦隔腫瘍

血管等に浸潤がなければ胸腔鏡下に切除を行います。正中に位置する大きな腫瘍の場合でも両側から胸腔鏡下に切除を行うことにより体にかかる負担を軽くします。通常この類の腫瘍に対しては胸骨正中切開(胸の真ん中を切る方法)で行われることも多いのですが、胸腔鏡下手術は侵襲の度合いや整容面においては圧倒的に優れています。

転移性肺腫瘍

転移性肺腫瘍

他の臓器の腫瘍(癌)が肺に転移した状態です。転移した肺の腫瘍を切除することにより予後が良くなることが期待される場合は切除を検討します。手術は肺がんの手術と同様に胸腔鏡下に行います。多発している場合でも切除方法の工夫によって完全に切除することが可能な場合もあります。